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Webマガジン Vol.20 - Feb., 2017

Product News:マルチ/ハイパースペクトル技術解説:第二回「マルチスペクトルカメラ」

  パシフィコ横浜で開催されたOPIE ‘16(5月18日~20日)において、コーンズテクノロジー株式会社は、『マルチ/ハイパースペクトル技術原理と応用 選び方・使い方のポイント』という題目で講演発表を行いました。前回は、マルチ/ハイパースペクトル技術を理解する上で重要な【分光】を中心に説明しました。第二回目は、マルチ/ハイパースペクトル技術の具体例として、マルチスペクトルカメラを中心に紹介します。

■ マルチスペクトルとは

マルチスペクトルは、科学観測などで広く使用される分光技術の1つであり、特にイメージングを行うものは、マルチスペクトルイメージング(MSI)として知られています。ここでは、NASAのSolar Dynamics Observatory(SDO)で観測された動画(NASA SDO-Argos View)を元に説明いたします。

  この動画では、太陽表面や大気の活動、太陽風やフレアと磁界の関連性を説明。波長は極紫外線(0.1nmから150nm)とされています。なお、動画では見掛け上わかり易くするために、各波長のデータを異なる色で処理をしており、分光の数は9種類となります。 この動画から、それぞれの波長(色)で異なる情報が容易に取得できる事がわかると思います。

■ 主な分光方法

次に、マルチスペクトルの主な分光方法を紹介したいと思います。マルチスペクトルの主な分光方法として、バンドパスフィルタを搭載したフィルタホイールを回転させ、バンドパスを通して得られる異なる波長の情報を取得する方法になります。最近では、イメージセンサ上に分光器を実装した製品(モザイクタイルなど)も登場しており、今後更なる小型化・低価格化が進んでいくものと思います。

  • メリット
    • 観測対象となる物質が既知の場合に非常に有利(特定の気体・個体・液体)
    • 構造が比較的シンプルで、設計コストも高くない(フィルタホイール式の場合)
    • リアルタイム測定が可能(イメージセンサ上に分光器を実装した製品の場合)
  • デメリット
    • リアルタイム測定ではない(フィルタホイール式の場合)
    • 使用する波長を変更したい場合は、フィルタを変更する必要がある
    • 構造上多くのフィルタを搭載することが難しい(分光数を増やすと、システムのサイズが大きくなる)

■ 実現している技術

マルチスペクトル技術は様々な市場で使用されておりますが、産業界においては、製造における歩留まり向上、品質管理のために使用される事が多いです。特に検出器も安価である近赤外線領域の波長を用いた水分や膜厚測定器への応用が実施されています。

  求められること 解決策
外乱除去 外乱光などの外的影響により発生する計測誤差(ドリフト成分)の除去が必要 複数の異なる波長を用い、外的影響による計測誤差を除去
測定物選択性 水蒸気の向こうにある紙上水分測定など、“真”に計測したいモノのみを測定 波長の狭帯域化やアルゴリズム(演算処理)を用いて実現
再現性の維持 光源の劣化に伴い、納入当初と使用数年後で、計測精度に相違がないことが必要 リファレンス波長を用いることで、強度のゼロ点を常時補正
多成分測定 同時に複数の成分を測定(食品の場合、水分と資質など 異なる波長を複数用いることで多成分測定に対応可能
連続測定 インラインでの測定の場合、連続測定が必要 フィルタホイール式の場合、回転数を高速化することで対応可能

■ マルチスペクトルの具体例:センシング

当社が30年以上前から日本国内の産業市場に紹介しております、フィルタを用いた近赤外線マルチスペクトル技術を使用した英国NDCテクノロジー社IG710eを紹介いたします。このIG710eは、水分・膜厚などを計測する測定器となりますが、検出には価格が高いフォーカルプレーンアレイ『イメージング』を使用せずに、『センシング』を行う測定器になります。
IG710e測定器内には、最大10波長を取り出すためのフィルタが搭載されたフィルタホイールが内蔵されており、このフィルタホイールを高速回転することで、計測対象物の複数の成分を高速で計測することができます。分光に使用している波長は、1.0μmから2.5μmの近赤外線となります。


フィルタホイールを用いた近赤外線マルチスペクトル技術の紹介(センシング)

ここで、R&Dとは異なる製造ラインでの課題に対して、安定かつ高精度な計測を行うためにNDCテクノロジー社が採用しております分光技術を少し紹介します。
フィルタホイールには、計測対象物(例えば、水分など)に吸収を持つ波長のフィルタ(吸収波長)を搭載しますが、その他に吸収を受けないが一方で吸収波長に近傍な波長(参照波長)のフィルタが搭載されます。この吸収波長と参照波長をLambert-Beerの法則に基づいて、吸光度を算出します。同式の分子となる参照波の吸光度が、長期安定性を確保し、製造ラインで取り除く事の出来ない外乱の影響度を除去するために使用されます。また、光源の劣化に伴う計測のドリフトも除去することが可能です。

以下画像では、6枚目のフィルタ(rde005)の吸光度が大きく変化し、1枚目のフィルタ(rde000)の吸光度の変化が小さい事が見て取れます。この事からこの例では、吸収波長としてrde005、参照波長としてrde000を使用する事で最適な計測結果を得られる形となっております。


計6枚のフィルタによる各波長の吸光度(左軸)とフィルム厚の測定結果(右縦軸:μm)の相関性のグラフ
(吸光度と測定結果との紐付けにはアルゴリズムを使用)

■ マルチスペクトルに関して~具体例:(センシング)~

  以下の画像は、NDCテクノロジー社の測定器を用いた1つの事例となります。

近赤外線マルチスペクトル技術を用いた水分・膜厚測定器(センシング)


ウッドチップの水分測定(左) ・ チップスの水分・油分測定(右)


フィルム厚の測定(左) ・ パウダーの水分測定

■ マルチスペクトルに関して~具体例:イメージング1~

中赤外線マルチスペクトル技術を用いた気体の定性・定量(イメージング)

次に『センシング』では無く、フォーカルプレーンアレイを用いた『イメージング』としてのマルチスペクトル製品を紹介します。以下で紹介する製品は、カナダTelops社のマルチスペクトルカメラであり、主にガス計測で利用される中赤外線領域の検出器を用いたカメラになります。先ほど紹介しましたNDCテクノロジー社と同様に、装置内部に特定のフィルタを搭載したフィルタホイールを内蔵しており、多くの分光情報を取得する事が可能です。


Telops社製マルチスペクトルカメラ

Telops社(カナダ) MS-IR 仕様 (最大8枚のフィルタホイール搭載可能)
  MS-IR MW InSb MS-IR MW MCT MS-IR FAST MS-IR HD InSb MS-IR VLW MCT
検出器タイプ 3.0~5.4μm 3.0~4.9μm 3.0~5.0μm 3.0~5.0μm 7.7~11.8μm
分解能 640×512 640×512 320×256 1280×1024 320×256
検出器ピッチ 15μm 15μm 30μm 15μm 30μm
フレームレート 350Hz
4200Hz@64×8
115Hz
117000Hz@64×2
2000Hz@320×240
90000Hz@64×4
105Hz
2600Hz@64×8
300Hz
76000Hz@64×2

■ マルチスペクトルに関して~具体例:イメージング 2~

ここでTelops社マルチスペクトルカメラを用いた計測事例を紹介します。 以下の画像は、7.7~11.8μmの波長帯の検出器を搭載したマルチスペクトルカメラで、メタノールが気化する様子を撮影した動画になります。 この事例で計測したメタノールの吸収波長は、グラフの通り9.8μm近辺にスパイク状の強い吸収を持っているため、この波長に対応したバンドパスフィルタを使用する事で、通常のブロードバンドでは見る事ができないメタノールの気化の状況を可視化する事が可能になっております。


マルチスペクトルカメラで、メタノールが気化する様子を撮影

■ マルチスペクトルに関して~具体例:イメージング 3~

最後にTelops社マルチスペクトルカメラを用いた計測事例をもう1つ紹介します。
以下の画像は、3.0~5.4μmの波長帯の検出器を搭載したマルチスペクトルカメラで、火炎を撮影した動画になります。 この事例では、ブロードバンドでは従来通りのサーモグラフィを実現しておりますが、二酸化炭素(CO2)が強い吸収を持つ4.3μm近辺のバンドパスフィルタを使用することで、従来のサーモグラフィ以外に、燃焼で発生する気体の観測も可能となります。 このテクニックは、燃焼事象(完全燃焼の具合など)を評価するために多く使用されております。


マルチスペクトルカメラ(3~5.4μm)で炎を撮影

以上のように、マルチスペクトル技術は既に多くの市場で採用されております。次回はハイパースペクトルカメラを中心に紹介します。

関連情報 ・ お問い合わせ

03-5427-7564 理化学機器営業部(東京)
06-6532-1012 理化学機器営業部(大阪)

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