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Webマガジン Vol.23- Dec., 2017

Column: 技術基礎知識 『温度校正の手順』

赤外線カメラで精度の高い温度計測を行う場合は、精確な温度校正データが必要であり赤外線カメラメーカから供給される校正データを使うことが多いですが、ユーザ自身で行えるようになっている場合もあります。今回は改めてその温度校正手順について考えてみます。

精確な温度計測のためには放射率などの物理的な不確定性や環境に起因する反射、カメラ温度などの誤差要因を考慮しなければなりません。温度校正は赤外線カメラが検出する被写体の輝度値(例えば14bitデータ)と温度とを紐付けする作業で、この紐付けが可能なことは保証されています。

具体的には別の温度センサーで保証された黒体炉の温度をカメラに見せて、14bit輝度データと温度との関係を表わす温度校正データにあたる“検量線”を作ることに相当します。 温度校正により一旦この検量線が得られれば、それを赤外線カメラに組み込むことで温度計測が可能になります。 基本的な手順は以下のようになります。

■ 手順1

特定の赤外線カメラでターゲットの計測温度レンジが与えられた場合(e.g. 50~200℃)、電気的な14bitの出力範囲に入るように適切な露光時間を決定します。(下図参照。必要に応じてターゲットの計測温度レンジを分割し、それぞれで露光時間を決めます。)

説明図1

この話は物理量(この場合は温度)をデジタル量(この場合は14bit=0~16383=2^14-1)に変換する時の比率に関係しています。物理量の少しの変化でも敏感に検知できるようなデジタル量との比率であれば感度が高い(ルール1)と言えます。また、同じデジタル量で出来るだけ広い範囲を表すことができると良いですが(ルール2)、両者は競合します。

以下は分かり易いように、ターゲット温度レンジ50~150℃をデジタル量100で変換するサンプルです。

Aのケース: 100で温度レンジがターゲットの半分しか表されない。
デジタル量1に対応する温度変化は50℃=>100に対応。デジタル量1=0.5℃ カバーできる範囲 50℃

Bのケース: 100で温度レンジがデジタル量100に対応。
デジタル量1に対応する温度変化は100℃=>100に対応。デジタル量1=1℃ カバーできる範囲 100℃

Cのケース: デジタル量50が温度レンジ100℃に対応。
デジタル量1に対応する温度変化は100℃=>50に対応。デジタル量1=2℃ カバーできる範囲 100℃

【まとめ】

モデル 分解能 カバーできるレンジ 評価
ルール1  ルール2  総合
A 0.5℃/デジタル量1 50℃  ◎  × ×
B 1℃/デジタル量1 100℃  ○   ○   ○ 
C 2℃/デジタル量1 100℃  △   ○   △ 

Aは、ターゲットレンジをカバーできないので ×
Cは、ターゲットレンジをカバーできるがBより敏感でないので △
Bは、ターゲットレンジをカバーでき、分解能も最大になるので ○

■ 手順2

ターゲットの温度レンジに対応する14bit出力範囲を三等分し中間の小範囲の両端に相当する2つの温度を2点NUC用に使うというやり方(三分法)により得られた2つの温度を用いて2点不均一校正(以下「NUC=(Non-Uniformity Correction」)を行ない、そのNUCデータをカメラに組み込みます。(下図参照)
NCUは検知器を構成するピクセルの特性バラツキを補正する仕掛けで、赤外線カメラでは必ず適用されます。
NUC後のすべてのピクセルの特性は同じになり、この状態で温度校正を行います。また、その後温度計測を行う場合は必ずこの特定NUCと温度校正(検量線)を組み合わせて使用します。)

説明図2

■ 手順3

黒体炉を用いてターゲット温度レンジ中の複数の測定点で輝度値(14bitデータ)と温度を計測し(標準的には10点程度。)、温度校正を作成します。(下図参照)作成した温度校正について、プランクの式から計算した赤外線パワーと14bitカウント値のグラフを作成し、リニアな関係にあることを確認することで温度校正の妥当性をチェックします。

説明図3

こうして作成した温度校正を特定の赤外線カメラに組み込み、対応するNUCをロードすればこのターゲットレンジでの温度計測が可能になります。なお、温度校正と温度計測は表裏の関係にあり、できるだけ温度校正を行った時と同じ条件で温度計測を行うのが温度精度上有利であり、これを損なう条件が多いほど温度精度は悪くなると考えるべきです。
(e.g. 同一であることが必須の条件:カメラそのもの/レンズ&フィルター/露光時間/NUC、同一であることが望ましい条件:フレームレート/Windowing/距離) 

温度校正に関するご要望等ございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。

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