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Webマガジン Vol.6 - Sept., 2013

マイクロ波リモートセンシング研究 合成開口レーダ用1270 MHz送受信装置

子供の頃からの夢を実現するために研究者になった

私は、インドネシアの空軍基地内で生まれ育ち、子供のころから、様々な飛行機とレーダに日常的に接触したため、そのころから飛行機とレーダを自分で試作したいという夢をもつようになった。小学校から高等学校まで、この夢を実現するために、飛行機とレーダに関連する様々なものを勉強した。また学校でずっと一番の成績でいるために必死に猛勉強をした。


千葉大学 西千葉キャンパス

   1990年にインドネシア政府研究科学省の奨学金の募集があり、インドネシア全国の優秀な高等学校生(約1万5千人)から25名の学生が選ばれ、インドネシア政府研究科学省の研究員として採用され、世界各国の関連大学に留学した。自分もその中の一人で、1990年に来日し、日本語を1年間勉強してから、金沢大学工学部電子・情報工学科に進学した。自分にとって、ずっと夢だったレーダを自分で開発したいため、学部4年生のときに、大電流深地下探査レーダを研究し始めた。同大学で修士課程の際も、同様に地下探査レーダにおける地中電磁波散乱のシミュレーションの研究をし、1997年に修了した。

   1997年~1999年にインドネシア政府研究科学省に戻り、インドネシア発の地下探査レーダを開発した。1999年に千葉大学に進学して、環境リモートセンシング研究センターにて合成開口レーダ(SAR)の勉学と研究をしはじめた。2002年に博士課程を修了し、同大学電子光情報基盤技術研究センターで講師(中核的研究機関研究員)として、移動体衛星通信(ETS-VIII)の地上移動局、SARセンサなどによく使用されているマイクロストリップアンテナの研究をし、様々な円偏波マイクロストリップアンテナの関連特許を出願した。2005年に同大学環境リモートセンシング研究センターの准教授(2013年より教授)として採用され、現在にいたるまでの研究を展開させ、災害監視をはじめ、リモートセンシングまたは地球観測用のSARセンサのRFシステム、アンテナ、画像信号処理、応用開発などを本格的に研究開発した。

   この研究では、円偏波合成開口レーダ(CP-SAR)をはじめ、GPS-SAR、GNSS-ROなど、様々なマイクロ波センサを提案した。また、この各種のセンサを実証実験するために、大型無人航空機(JXシリーズ)と小型衛星(GAIAシリーズ)を開発している。この研究開発を強化するために、当研究室はクリーンルームをはじめ、電波無響室、マイクロ波測定器などを整備して、マイクロ波リモートセンシング分野における充実した環境づくりにも力を入れている。当センターは全国共同利用共同施設であるので、研究者をはじめ、一般の方々もヨサファット研をはじめ、当研究センターのスタッフと共同研究することができる。

ヨサファット研究室の目指すところ

   千葉大学環境リモートセンシング研究センター・ヨサファット研究室は、これまでに、GNSS掩蔽(えんぺい)(GNSS-RO)と円偏波合成開口レーダ(CP-SAR)の小型化、軽量化、薄型化などの技術を開発した。本事業では、この技術を生かし、大気物理情報と大陸規模の地殻変動との関係を解明するために、国内外の研究機関と共同して、GNSS-ROセンサとCP-SARセンサ搭載の小型衛星群(2基)を開発している。

   既存の地球観測衛星は、大型で開発に多大な費用と期間を要するため、基礎科学や応用ミッションを実行する際、必要な時に必要十分なデータがとれず、国内外の学術教育研究機関から改善を要請されていた。本学は、これを解決するため宇宙用GNSS-RO・CP-SARセンサに関する様々な基礎と応用技術を開発した。この新技術の開発により、従来の大陸上空からの観測だけでなく、海上も含めたグローバルな大気物理情報と大陸規模地殻変動の観測が可能となり、さらに、低予算で短期間での小型衛星の開発は、小型衛星群による観測など必要に応じた衛星による観測を可能にする。

   本事業で実現させる予定の50 kgクラスのGNSS-ROセンサ搭載小型衛星(GAIA-I)と、約100 kgクラスのCP-SARセンサ搭載小型衛星(GAIA-II)は、本学で開発した小型、軽量な宇宙用のGNSS-RO・CP-SARセンサの小型衛星搭載の宇宙実証実験である。近い将来、世界のマイクロ波リモートセンシング分野の発展に貢献できると期待する。本事業のGNSS-ROセンサ搭載小型衛星によって、地上GNSS-RO受信局と比較し、より広域な大気物理情報(水蒸気、電子密度変化等)の観測が実現できる。また、既存の人工衛星では、垂直方向での水蒸気情報が観測できないのに対して、水平全方向観測できるGNSS-ROセンサは掩蔽法(えんぺいほう)でこの情報を抽出できる。そのため、海域における地殻変動による電離層変化の観測に活用するとともに、将来海底大地震や津波、水蒸気分布、大気圧などの観測にも活用できると期待する。

   学問的効果として、本事業のGNSS-ROセンサ搭載小型衛星(GAIA-I)が、グローバル地殻変動と大気物理情報(電子密度変化、気温、水蒸気量など)を観測することにより、地球温暖化の観測、気象予報の精度向上などに貢献できる。この研究成果も、大型地震をはじめ、大陸規模地殻変動の発生メカニズムの把握に結びつくと期待する。また、CP-SAR搭載小型衛星(GAIA-II)により、既存の直線偏波SARより多数かつ精密な地表散乱情報が収集でき、災害関連の地表散乱情報(地盤沈下など)をはじめ、地球環境変動関連情報の抽出も高精度及び詳細な解析に貢献できると期待する。

   社会的効果として、この2基の小型衛星の実現により、人間環境変化のメカニズムを把握し、将来のわが国とグローバル社会の安全と安心を実現できると期待する。本事業の成果は当センター(共同利用・共同研究拠点)を通して、一般社会、専門家、連携研究機関などに提供し、精度と品質保証の良い衛星画像データとその応用の拡大に結びつくと期待する。

   改善効果として、本事業は国内外の研究教育機関による、環境リモートセンシング分野における教育と研究の高度化の推進につながる。また、各機関の特長を集結させ、高度技術である小型衛星と宇宙用センサの開発に尽力し、世界における環境リモートセンシング分野をリードすると期待する。

図1
  図1.
  ヨサファット研大型無人航空機JX-1の初飛行
  (富士川滑空場、2012年6月7日)

 

図2

合成開口レーダ用1270 MHz送受信装置

現在、当研究室では小型衛星GAIA-IIに搭載するLバンド(周波数1270 MHz)円偏波合成開口レーダ(CP-SAR)を開発している。この宇宙用のCP-SARを開発する前に、地上実証実験用のCP-SARセンサを開発している。図2に示すように、このセンサは主にチャープパルス発生器、送受信装置、画像信号処理装置から構成されている。チャープパルス発生器と画像信号処理装置は、当研究室が独自開発した。また、この1270 MHz送受信装置はコーンズテクノロジー社のご協力をいただき、開発されたものである(図2と図3を参照)。

図2
 図2.
 円偏波合成開口レーダCP-SARシステム

 

図3
 図3.
 合成開口レーダ用1270 MHz送受信装置

  このRFシステムは図4に示す当研究室の大型無人航空機に搭載する予定である。このRFシステムは上空約2kmからCP-SAR画像を生成するためのものである。このシステムは送信と受信モジュールから構成されている。送信部の入力はベースバンドDC~150 MHzをもつチャープパルスのIとQである。そして、このチャープパルスは周波数1,270 MHzで変調される。

   ただし、この製品の送受信システムの周波数レンジは、1270 MHz±50 MHz (最大±150 MHz)をもっている。送信システムは利得チューニング機能をもち、1, 2, 3, 8, 16 dB または0~-31 dBで調整することができる。また、受信部の利得チューニング機能は、1, 2, 3, 8と16 x 2または0~-62 dBで調整することができる。パワーアンプ(PA)は50Wの送信パルス(最大10µs・2%の最大duty circle)の出力電力を制御することができる。送受信アンテナのスイッチング速度は一般的に1µsで、最大2µsである。アンテナは左旋円偏波(LHCP)と右旋円偏波(RHCP)のマイクロストリップアレーアンテナから構成されている。チャープパルス発生器によって、パルス幅とバンド幅を制御する。現在、この送受信装置を活用して、CP-SARシステムの室内と地上実証実験を行っている。近い将来、当研究室の無人航空機に搭載して、CP-SARシステムの飛行試験を実施する予定である。将来、このCP-SARセンサを活用して、人が近づけない災害地域(火山噴火域など)を火山灰、雲、霧などを通過できる無人航空機搭載合成開口レーダで観測する予定である。また、当研究室の小型衛星に搭載することによって、グローバル地球表層を観測することができると期待している。

図4
 図4.
 ヨサファット研・大型無人航空機JXシリーズ
 ※機体内の黄色箱が送受信装置

 

図4

あとがき

   弊社では、増幅器を始めとして多様な各種電子機器を揃えています。 それらの幅広い商品ラインナップで、研究・開発から製造まで種々のご要望にお応えする事ができます。

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